運動を習慣にしよう

アルツハイマー病の最大のリスクは「身体的不活動」

 

ナン・スタディなどの研究から、積極的にさまざまなことをするライフスタイルが認知症の発症を遅らせることもわかってきました。

 

それを実証する調査報告もあります。

 

アルッハイマー利認知症の高齢者を対象に、高血圧、糖尿病、うつ症状など認知症の危険因子が病の発症にどのような影響を与えたかをメタ解析(多くの研究結果をまとめる手法)した、アメリカの研究です。

身体的不活動は発症への影響度が高い

運動を習慣にしよう

 

数ある危険因子の中でも発症への影響度が高いのは「身体的不活動」です。

 

身体的不活動とは、運動不足かつ日常の活動量が少ないことをいいます。

 

それが原因で、アルツハイマー病を発症する人が最も多いということが明らかにされました。

 

逆に言えば、認知症の発症を遠ざける最も有効な方法は体を動かすことなのです。

 

 

身体活動を増やすためには「運動」することです。

 

まず、運動は取り組みやすいです。「歩こう」「体を動かそう」という意識だけで、いつでもできます。

 

ひとりでもできるし、友達や家族と一緒に楽しむこともできます。

 

しかも「歩くこと」は、道具も特別な場所も不要でどこでもすぐにできます。

 

運動は習慣化しやすいのもメリットといえます。

 

買い物や外出などは用事があってこそで、習慣化はしにくいですよね。

 

その点、体を動かすことが目的の運動は[続けよう]という意識だけで毎日の習慣にすることが出来ます。

 

習慣にすれば、身体活動量は劇的に増えるでしょう。

 

しかも運動は健康増進や体力増強などの効果があり、それが日常生活の活動量を増やすことにもつながります。

 

運動不足で体力や筋肉などが哀えると体が動きにくくなったり疲れやすくなったりします。

 

その結果、家に閉じこもりがちになりやすいのです。

 

家に閉じこもって体を動かさないと、ますます体力などが衰えて外出しにくくなる悪循環に陥ってしまいます。

 

運動で健康的で動きやすい体をつくれば、外出など日常生活の活動もしやすくなるはずです。

 

ポイント:運動による健康増進と体力増強が日常生活の活動量を増やすことにもつながる。

 

関連参照:
だから、歩くのがいい。


「脳を太らせる」効果が期待できる

 

運動のメリットは、取り組みやすさや健康増進だけではありません。

 

運動が体だけでなく、脳を活性化することもわかってきました。

 

運動には、大きく3つの効果があります。

 

1つは筋肉や骨、有酸素能力など体力の向上です。

 

運動を続けることによって筋肉量が増え、骨密度も高くなります。

 

さらに運動すると肺活量が増え、より多くの酸素が取り込める有酸素能力が高まります。

 

酸素はエネルギー産生から脳の活動、細咆の新陳代謝まで生命活動に不可欠なものです。

 

多くの酸素を取り込めるようになるとエネルギー産生などかしやすくなり、これが体力につながります。

 

運動で活動しやすい元気な体になるわけです。

 

また、運動で筋肉量が増えて足腰か強くなったり、骨密度が改善したり、バランス感覚がよくなったりすると転びにくくなります。

 

実は、転倒による高齢者の死亡事故は交通事故より多い。

 

転倒による骨折が原因で寝たきりになってしまう人も少なくありません。

 

しかも転んで頭を打つと脳に軽微な損傷ができることかあり、それがアルツハイマー病に移行する危険かあります。

 

体力の向上で転倒を防げば、その分だけ認知症のリスクも減ります。

 

 

2つ目に、運動は体の循環器系にもよい影響を与えます。

 

循環器系とは、血液やリンパ液など体液を体内に循環させる器宮群のことをいいます。

 

具体的にいえば、血管やリンパ管、心臓などです。

 

運動すると循環器が活性化され、それによって血液やリンパ液などの流れがよくなります。

 

すると脂質代謝の活性化、体脂肪などの適正化、血圧の制御、インスリン抵抗性(インスリンが正常に働かなくなった状態)の改善、感染症などに対する防御反応の促進、細胞を壊す活性化酸素を抑える抗酸化作用などが高まり、健康な体になります。

 

そして、これらの作用が脳血管障害を防ぐことにつながります。

 

たとえば、脂貿代謝の向上と血圧が制御されれば、高血圧や脂質異常などの改善につながります。

 

代謝が活性すればインスリン抵抗性の向上などで糖尿病の予防・改善も期待できます。

 

ちなみに糖尿病も認知症につながりやすい病気です。

 

血糖値を調整するインスリンの作用が低下すると脳の神経保護作用が弱まります。

 

運動は生活習慣病の改善、そして脳梗塞など脳血管疾患による脳血管性認知症の予防につながるわけです。

 

生活習慣病のコントロール不足がアルツハイマー病の要囚になることもわかっていますので、生活習慣病の改善はアルツハイマー病のリスクを下げることにもなります。

 

また、血流を促す運動で脳の血流がよくなって酸素が行き渡ると、脳はイキイキします。

 

血流不足に対する耐性も向上し、何らかの原因で脳の血流が不足しても障害か残りにくくなると考えられています。

 

3つ目は
最近の研究で、運動は脳に直接作用し、脳を太らせる(肥大させる)効果のある
ことがわかってきました。

 

運動によって脳の栄養素であるBDNF(脳由来神経栄養因子)の分泌が促進されます。

 

BDNFが増加すると神経細胞が新しくつくられたり、細胞が大きくなったり、神経細胞の死滅が減少したりします。

 

それぞれの神経細胞をつなぎ、細胞の情報伝達の役割を担うシナプスも形成されます。

 

つまり、脳のボリュームが増えるわけです。ボリュームか大きければ、多少萎縮しても認知症は発症しにくくなります。

 

特に、BDNFは記憶を司る海馬周辺で多く分泌されます。

 

アルツハイマー型認知症における脳の萎縮は海馬から始まります。

 

そのため、記憶障害が出やすい。海馬にBDNFが多く分泌されることで、海馬の萎縮を食い止める効果のあることがわかっています、

 

運動には、アルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβの蓄積を抑える効果も期待できます。

 

アミロイドβはアルツハイマー病ではない人の脳にも存在し、蓄積と分解を繰り返しています。

 

ところが加齢とともに速やかな分解がされにくくなり、蓄積してしまうのです。

 

運動するとアミロイドβの分解を促す酵素・ネプリライシンが分泌されることがわかっており、これによってアルツハイマー病を発症しにくい脳をつくることが可能かもしれません。

 

また、運動によって、やる気などのもととなる神経伝達物質・ノルアドレナリンが賦活されて脳が活性化します。
体を動かすと気持ちまでシャッキリするのはこのためです。

 

ノルアドレナリンの活性化は、認知症の危険因子の1つであるうつ症状の改善につながると考えられています。

 

 

小さな効果を積み重ねることが大事です

 

運動は体だけでなく、脳にもよい影響を与えます。

 

ただし、よい影響を与えることは間違いありませんが、1つ1つの効果はさほど大きなものではありません。

 

認知症の要因はさまざまで「運動すれば認知症にならない」というだけでもありません。

 

ですが、たとえ小さな効果であっても、運動を長期的に続ける中で認知機能の低下の抑制や認知症発症の遅延は期待できます。

 

そして、健康増進や疾病予防につながる運動は、自立した生活や活動的な生活を実現する要でもあります。

 

年齢を重ねるほど、運動不足になりがちです。

 

脳のためだけでなく、健康のためにも運動はやって損はないものです。

 

 

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