転ぶのはなぜ怖いのか

骨折(転倒・骨折の3つのパターン)

 

転倒・骨折の要因は2つあります。

 

第1は、転倒しやすい、転びやすいこと
第2は骨折しやすいこと、骨がもろく弱いこと。

 

ほとんどの場合は、転倒して骨折をきたしますが、時には、転倒をしないにも関わらす、元々骨がもろくなっていたところに立ったまま何かの拍子で骨折し、骨折したために転倒する例もあります。

 

成人のからだの中には206の骨がありますが、転んで強い衝撃が与えられれば、どの骨でも骨折をきたす可能性があるのです。

 

ここで「転ぶ」という言葉を明確にしておきましょう。

 

通常、転ぶ=転倒ですが、厳格に言えば、
平面の床面で滑ったり、つまずいたりして転ぶことを「転倒」といい、
階段や坂道、スロープなど高低差のあるところをからだの一部を接しながら転がり落ちるのを「転落」
ベッドや踏み台、建物等の高低差のあるところから身体が接しないで落下するのを「墜落」とします(東京消防庁の定義より)。

 

転倒・転落には主に前方、側方、後方への3つのパターンがあります。
前方に転ぺば、手首の骨折(手関節の彫彫遠位喘骨折)、
側方に転べば、方騰新の骨折(股関節部‥大腿骨近位部骨折)、
後方に転ぺば奪肌の骨折(胸椎や胆智の圧迫骨折)を起こすことが多いのです。

 

もちろん、その他にも、その峙の状況によって転んでいろいろな部位に骨折を起こします。

 

高齢者では、骨が弱くもろくなっていく骨粗しよう症を基盤として、転んで手首、肩、背骨、大腿骨の骨折をきたすことが多く、特に大腿骨近位部の骨折は、入院、手術、リハビリテーションと時間がかかり、お金もかかる骨折です。

 

本人の体も痛い、心も痛い、家族のサイフも痛いという転倒による骨折では、もっと重要なものです。

 

よく、転倒→骨折→寝たきり・要介護の一連の流れで語られる骨折が、この大腿骨近位部骨折、その中でも特に大腿骨のつけ根の内側の頸部と呼ばれるくびれた部分の骨折(大腿骨頚部骨折)です。

 

治るのに約3ヵ月間、入院・手術に平均約150万円かかると言われます。

 

前方に転んで手を突いて手首の骨折をきたした高齢者が、何年か後に、側方に転んで大腿骨頚部骨折を起こす例が少なくありません。

 

2013年8月、三笠宮妃百合子さまが、宮邸で転んで左大腿骨頚部骨折をきたして手術を受けました。

 

実は、1997年にも右の大腿骨骨折をして手術を受けています。

 

このように、片側の大腿骨頚部骨折を起こすと、しばらくして反対側の同じ骨折をきたす例があり、転倒・骨折の負の連鎖をつくらないために、いかに転倒を予防するかが重要なのです。

頭のケガ(よく酒を飲む中高年男性必読)

 

頭のケガにもいろいろあります。

 

頭のケガは、頭蓋骨のケガ、脳のケガなど。

 

転んで起きる頭のケガで、特に注意が必要なのが慢性硬膜下血腫です。

 

頭蓋骨の下、脳実質との間に、硬膜、くも膜、軟膜の3枚の膜があり、脳を包んでいます。

 

転んで頭を打つなどの衝撃により、硬膜の下、くも膜との間に出血して血液が溜まり血腫ができるのが、硬膜下血腫です。

 

頭を打って3日以内にできるのが急性、3週間以上してからじわじわと血液が溜よって血腫ができるのが慢性です。

 

転倒との関係で特に重要な「慢性硬膜下血腫」というのは、その時、本人はそれほど頭を強く打ったと思っていないこと、頭を打った直後1〜2週間は何ら痛みや、神経症状がないこと、頭を打ったこと自体も忘れてしまっている側か少なくないなどの特徴があります。

 

若い頃からよく酒を飲む50代後半のサラリーマンT氏。

 

ある日の夜更け、はしご酒をしてほろ酔い気分で最終電車に乗ろうと急いで階段を降りた時にすべって転んで軽く頭を打ちました。

 

特に痛みも強くなく、コブもできていないので、そのまま帰宅。

 

翌朝も何の変化もないので特に医者に診てもらうことなく過ごし、仕事、仕事、ちょっと一杯の日々が続いていました。

 

1ヵ月後あたりから、歩くとちょっとフラフラする感じと物忘れがひどい、疲れやすい、頭痛もあります。

 

どうもおかしいと会社近くの病院の脳神経外科へ。

 

診察検査の結果、「慢性硬膜下血腫です。午後、手術をしましょう」と言われビックリ。

 

局所麻酔で頭蓋骨に穴を穿けて溜まった血液を抜き出してもらったら、術後、間もなく症状は消えていきました。

 

若い頃から多く酒を飲む男性は、高齢者の脳が委縮しているのと同じように脳が委縮していることが少なくなく、そのため脳とくも膜の間のスペースが拡大し、血管がぴんと張った状態となりやすく、その分、切れやすく血腫を作りやすいとも言われています。

 

いずれにしても、頭を軽く打った場合でも、その後3週間〜1ヵ月は、いろいろな症状やからだの変化が現れた時には慢性硬膜下血腫の可能性を考えることが必要です。

 

この知識を多くの人が知っていることが大切です。

転倒恐怖(不安が負の連鎖をつくる)

 

我が国の高齢者では、1年間に自宅で12・4%(男性8.2%、女性16%)、屋外で11・4%(男性8.5%、女性13.7%)が転倒を経験しています(平成17年版「高齢社会白書」)。

 

自宅でも屋外でも女性高齢者の方が男性高齢者よりも転倒する率が高く、時に自宅では約2倍です。

 

いずれにしても、転倒は高齢者が日常的にしばしば体験する事故の一つであり、家族や近所の人、友人、知人などからも、「○○さんが、転倒してケガした」という話が伝えられることは珍しくありません。

 

新聞、テレビ、ラジオなどのマスコミからも、「落語家桂米朝さんが複数回にわたって転倒・骨折」の事例など著名人の転倒事故の報道が時になされます。

 

こうした状況で、知らず知らずのうちに多くの高齢者並びに高齢者のいる家族(同居、別居に関わらす)は、転倒に対する警戒心や不安、恐怖心を抱くようになります。

 

高齢者が転倒するということは、転倒するほどからだの機能が衰弱している、あるいは転倒するほどからだの内なるひずみがあると考えられます。

 

実際に転倒を経験した高齢者は、からだの機能の衰えを強く実感します。

 

以後、しっかりと安全に歩くことができるだろうかという不安が生まれ、転倒への恐怖心を抱くことになります。

 

特に骨折や顔を打つなどの大ケガをした時には、痛みや病院での治療の辛い記憶が心に刻まれます。

 

また、家族に迷惑をかけてしまったこと、「今度転んだら、また皆に迷惑をかける」という思いが強くなるのです。

 

そのため、
外出や日常生活での行動を抑制するようになり、やれば出来るはずの行為や外出行動を意識的に避けるようになり、閉じこもりの生活に至ることがあります。

死(若くても他人事ではありません)

 

転んで倒れた衝撃などにより死ぬこと、転倒を死因とする死のことを「転倒死」と表現します。

 

交通事故による死亡者数は、平成20(2008年では7499人、一方、転倒・転落による死亡者数は7170人です(厚生労働省平成21年度「不慮の死亡統計」より)。

 

これを平成7年(1995)年と比較すると父通事故死は1万5147人からおよそ半減していますが、転倒』転落死は5911人から年々次第に増加しています。

 

高齢者の人口が増加するにつれて転倒・転落による死亡者数も増えることを示しているのでしょう。

 

著名な芸能人の転倒・転落による死亡事故は、印象深く記憶に刻まれています。

 

 

【歌手・松尾和子さん】の例

 

フランク永井にスカウトされ、「ムード歌謡の女王」と称されました。

 

「東京ナイトクラブ」「誰よりも君を愛す」など次々とヒット曲を飛ばしましたが、平成4(1992)年9月25日午前3時頃、自宅階段で転落しました。

 

同居していた親族が駆けつけ、声をかけましたが、本人が「大丈夫」と答えたため救急車を呼ばなかったのです。

 

昼過ぎにベッドで死亡しているのが発見されました。

 

死因は転落による急性硬膜下血腫による脳圧迫でした。

 

57歳の若さでした。種々のトラブルを抱えていて、アルコールと睡眠薬に頼る日々だったといいます。

 

 

【俳優・谷啓さん】の例

 

ハナ肇さんや植木等さん(いずれも故人)がいたコミックバンド「クレージーキャッツ」のメンバーで、トロンボーン奏者やコメディアンとしてテレビ、映画・舞台で活躍、[ガチョーン]などの流行語で知られていました。

 

映画『釣りバカ日誌』の冴えない佐々木課長役も人気でした。

 

平成22(2010)年9月11日午後6時頃、自宅の1階から2階への階段を昇る際につまずき、前のめりに倒れて階段で顔面を強く打ち、病院に搬送されましたが翌朝、脳挫傷のため死亡。78歳でした。

 

その事故のI〜2年前から体調び悪く、足元もおばつかなく、物忘れもひどくなるなどして、仕事を休止し、自宅で療養中でした。

 

 

 

【俳優・細川俊之さん】の例

 

文学座出身のクールな二枚目で知られていましたび、悪役やコミカルな役、アニメの声優(『あしたのショー』の力石徹)、

 

ミュージカル役者(木の実ナナと共演の「ショーガール」など)、ラジオのパーソナリティ(「ワールド・オブ・エレガンス』FM東京)など、実に多彩な活躍ぶりでした。

 

平成23(2011年1月12日午後2時頃、自宅の居間で転倒して頭部を強打しました。

 

意識のないまま病院に搬送されましたが、14日午前5時半頃、急性硬膜下血腫のため死亡。70歳でした。

 

けいれん発作重積症、糖尿病、脳出血など、病気との闘いが長く、体調がすぐれないため、仕事を減らしていたといいます。

 

 

以上、松尾さん、谷さん、細川さんの三者に共通しているのは、第1に病気療養中など体調が良くない状態であったこと。

 

第2に自宅で転倒・転落していること。

 

第3に頭部もしくは顔面を強打して、脳外傷をきたしていることでしょう。

 

転倒・転落するほど、からだが衰弱していたり、内なるからだのひすみが存在していた結果、住み慣れているはずの自宅で転び、頭や顔を打って、脳外傷をきたして死に至るというものです。

 

こうした状況は、高齢者であれば起きやすいですが、50代、40代、30代で体調次第によっては発生するリスクはいつでも誰にでもあるのです。

 

屋外での転倒死は、さらに他者との関係性が加わって起きます。


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